葬祭ディレクターが見た家族葬 2025年10月
2025.10.04
近年、葬儀の現場では「家族葬」という言葉を耳にする機会が本当に増えました。
できるだけ静かに見送りたい 身内だけで温かく送りたい そう願うご家族が増えたのは、時代の流れだけでなく、「別れのかたち」が多様になった証だと感じます。
私はこれまで、数えきれないほどの葬儀に立ち会ってきました。
その中でも、今でも心に残っている一つの家族葬があります。
その日は、十数名で行われた家族葬でした。
出棺前に喪主である長男様が、こう話されました。
「父は人前で褒められるのが苦手な人でした。でも今日、こうして家族だけの時間を過ごせて、たくさんありがとうが言えた気がします。」
その時、私は改めて気づかされたのです。
家族葬とは、小さくすることが目的ではなく、深く向き合うための形なのだと。
一般葬のように多くの参列者が集まると、どうしても「進行」や「形式」に意識が向かいがちです。
一方、家族葬ではゆっくりと時間が流れ、思い出話や感謝の言葉が自然に交わされる――そんな温かい瞬間に何度も立ち会ってきました。
葬儀は別れではなく、感謝を伝える最後の時間。
家族葬には「寂しい」「簡素」というイメージを持つ方もいます。
ですが、家族葬でも“想い”が込められていれば、それは立派なお葬式です。
時代が変わっても、人を想う心は変わりません。
葬儀の形が小さくなっても、そこに流れる想いは決して小さくならない。
家族葬には、そんな深く静かな力があります。
これからも私は、葬儀の現場でその「想い」を大切にしながら、
ひとつひとつのご家族に寄り添っていきたいと思います。
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